たまの映画
吉祥寺バウスシアターで、上映終了間近の「たまの映画」を見てきた。バンド「たま」の元メンバーの活動を追ったドキュメンタリー。
有名バンドのドキュメンタリー映画というと、成功物語だったりとか、栄光と挫折とか、そういう切り口のものが多いなかで、ものすごく自然体の、平坦な作品だった。まず「たま」というバンドは、4人がそれぞれシンガーソングライターで、解散後も淡々と音楽活動を続けているということ。馴れ合うでもいがみ合うでもなく、食べていけるだけの仕事をして、その代わり「やりたいことだけ」やって生きている。
絵でも音楽でも、モノ作りに情熱を傾けたことがある人なら、彼らの生きかたは理想そのものに映るんじゃないかな。「たま」についてまったく予備知識のなかった私でも、そう思った。もちろん、それで食えているのは突出した個性や才能があるからだというのは、豊富に挿入されたライブのシーンを見れば、十分に伝わってくるけれど。
売れていた90年代の写真や映像が一切なく、あくまでも、現在の日常に焦点をあてた構成になっている。リアルで、普遍性のある物語。それだけに、ファン向けのように映ってしまうタイトルは、ちょっと惜しいかな。
作品中に、テーマとして「死」を扱ったセクションが出てくるのが印象的だった。
知久寿焼さんの、「死ぬまでの間をやりたいことだけで埋め尽くしたい」という言葉に共感した。
公開に際しての石川浩司さんのインタビューが素晴らしかったので、最後に引用。
明日か50年後かは分からないけど人間は死ぬから(笑)それまでをどう使うかは、大人になったら自分に任されている。それはちょっとだけ考えてベストな形を。この映画見たからって誰でも腹太鼓を叩けば食っていけると思ったらそれは間違いです!(一同爆笑)自分が一番いいバランスで長所を生かして「自分にとって一番楽しいことって何だろう」って原点に戻って考えた方がいい。
CINEMA TOPICS ONLINE|映画『たまの映画』「やりたいことをやる」という生き方~石川浩司、今泉力哉監督インタビュー(2)
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